FCP-022 男嫌い
Character Class Careful
FCP-022はエリアB-ルーム8に収容されます。ルーム内は人型FCP収容手引書に基づいてレイアウトされ、専用基準をクリアした家具が使用されます。食事の配給は一日に三度行ってください。事件記録023により、FCP-023にFCP-023-Aの行動を伝えることは禁じられています。
FCP-022は藍色の瞳を持ち、紺色の髪をポニーテールにした女性の姿をした麒麟です。FCP-023とは姉妹関係にあります。発見当初は人間と考えられていましたが、FCP-024のヒアリングからFCPとして扱われることになりました。首には十字架の中心にツァボライトがはめ込まれた黒いロザリオを、腰には一口の太刀を携えています。どちらも手放すことに抵抗を示し、特にロザリオは外す時間がほぼないほどに執着した様子が伺えます。
FCP-022は自身あるいはFCP-023の半径15m圏内に入った男性に対し、太刀を向けその場から立ち去るよう警告します。対象がそれに従った場合FCP-022は太刀を納め、深追いは行いません。対象がそれに従わない、あるいは近付いてきた場合は太刀で軽傷を負わせ、再び立ち去るよう警告します。それでも対象が従わない場合、太刀で重症を負わせ失神させます。重症を負った対象はどこかの部位を欠損するか、死亡します。なお、FCP-028、FCP-029に対してこの現象は確認されません。先述の状況以外では事件記録023の際に太刀が使用されましたが、収束後は確認されていません。
FCP-022は自身の体に血の付着を認識した場合、それが例え自身の血だとしても脱力状態となります。血を拭き取らないまま放置すると昏睡状態に陥り、さらに放置した場合は死亡すると考えられています。脱力状態のFCP-022が発見された際は速やかに血液の払拭を行い、FCP治療班に連絡してください。FCP-022のこの反応は血液に対する限局的恐怖症と考えられますが、血の視認や内出血など外皮に血が付着しない場合はこの反応は起きません。血糊や疑似血液も同様です。
男性と血液に対する異様な反応は、FCP-022の過去に起因されると考えられています。詳しくはFCP-022セラピーログを参照してください。
FCP-022セラピーログ01
目的:FCP-022の血液と男性に対する反応の原因追求
実行日:▅▅/▅▅
実行者:▅▅▅博士
前書:本セラピーでは催眠療法が行われました。
〈記録開始〉
▅▅▅博士:▅▅▅(FCP-022の個人名)。あなたは今、何処にいるの?
FCP-022:…私…、樹…大きい樹の前。これは…▅▅▅▅だ。私達はここから生まれるって、母様が言ってた。
▅▅▅博士:そうなのね。▅▅▅▅に対して、何か気になることはある?
FCP-022:私の家の実がなってる。隣には、別の家の実もある。私の家の実はなったばかりだから、まだ小さい。
▅▅▅博士:それについて、どう思う?
FCP-022:生まれてきたら、私が名前を決めていいと父様と母様が言ってくれた。私は▅▅(FCP-023の個人名)って名付けようと思ってる。
▅▅▅博士:▅▅、いい名前だね。…それからは、どうしたの?
FCP-022:私は実を見てて…、あっ。
▅▅▅博士:どうしたの?
FCP-022:…実が落ちた。私の家のじゃないほうの実。…赤い汁、飛んできた。赤いドロドロが実から出てる。大人が騒いでる。母様が私を見て悲鳴をあげた。家に無理矢理引っ張られて、洗って着替えさせられた。
▅▅▅博士:…それについて、どう思う?
FCP-022:なにが起きてるのか、わからない。母様の悲鳴は初めて聞いた。あのドロドロも、初めて見た。私のせいでドロドロが出てきたのかと思った。でも私は何もしてないから、わからない。
▅▅▅博士:…その後は、どうしたの?
FCP-022:…[編集済み]に呼ばれて、また▅▅▅▅の前に行った。村のみんながいる。泣いてる大人もいる。▅▅▅▅の根元の土が盛り上がってる。あの実が死んだってわかったから、手を合わせた。
▅▅▅博士:それについて、どう思う?
FCP-022:怒られると思った。実が死んだ時、私がいたから。でも、誰にも怒られなかった。逆に、慰められた。父様が私を抱きしめた。……なんだか、疲れてきた…。
▅▅▅博士:じゃあ、今日はこれでお終いにしようね。…お疲れ様、ありがとうね、▅▅▅。
〈記録終了〉
後書:今回のセラピー中に血の付着と思わしき供述がありましたが、記憶内のFCP-022の反応から血液恐怖症と直接的な関係はないと考えられます。次のセラピーの実行日は▅▅▅博士の判断に任されます。
FCP-022セラピーログ02
目的:FCP-022の血液と男性に対する反応の原因追求
実行日:▅▅/▅▅
実行者:▅▅▅博士
前書:本セラピーでは催眠療法が行われました。
〈記録開始〉
▅▅▅博士:▅▅▅。あなたは今、何処にいるの?
FCP-022:…樹…▅▅▅▅の前。父様と母様も一緒にいて、私の家の実が揺れてる。もうすぐ生まれてくる。
▅▅▅博士:そうなのね。それは楽しみね。…それからは、どうしたの?
FCP-022:落ちるまでみんなで待って……あっ、生まれ…、………。
▅▅▅博士:…どうしたの?
FCP-022:…▅▅が出てきた。でも、父様と母様の色じゃない。私の家の実から出てきたのに、色が違う。それに…狼みたいな、耳と尻尾がある。どうして、なんで?私、また何か…っ。
▅▅▅博士:大丈夫、大丈夫よ▅▅▅、あなたは何も悪くない。落ち着いて…そうよ、良い子ね…大丈夫だから。……それから、あなたはどうしたの?
FCP-022:私は▅▅を見てる。…男の麒麟が来た。目の色が▅▅と同じだ。父様と母様と話して……揉めてる。言いがかりをつけてくる。私はすぐに[編集済み]を呼んだ。父様と母様は悪くないから。
▅▅▅博士:そうなのね。…それから、あなたはどうしたの?
FCP-022:[編集済み]に言われて、▅▅を家まで連れてった。それから、母様と父様が帰ってくるまで、二人で待った。
▅▅▅博士:その状況を、あなたはどう思う?
FCP-022:…▅▅は、私の家の実から出てきたから、私の家族だ。色は確かにおかしいけど、でもそんなの関係ないって思ってる。…だけど、外では母様と父様と男がずっと揉めてるし、私達の様子を見に来た大人達は▅▅を見てなにか話してる。…男の怒号が聞こえる。▅▅が怯えてる。私も、怖い。………もう、やだ。
▅▅▅博士:…そうね、怖いよね。今日はこれでお終いにしようね。…お疲れ様、ありがとうね、▅▅▅。
〈記録終了〉
後書:今回のセラピー中に男性の存在が供述されましたが、記憶内のFCP-022との関わりの薄さから、FCP-022が男性を拒絶する直接的な要因ではないと考えられます。次のセラピーの実行日は▅▅▅博士の判断に任されます。
FCP-022セラピーログ03
目的:FCP-022の血液と男性に対する反応の原因追求
実行日:▅▅/▅▅
実行者:▅▅▅博士
前書:本セラピーでは催眠療法が行われました。
〈記録開始〉
▅▅▅博士:▅▅▅。あなたは今、何処にいるの?
FCP-022:…寝室。▅▅と一緒に寝ている。父様と同じ色になった▅▅と。
▅▅▅博士:そうなのね。▅▅のことについて、詳しく教えてくれる?
FCP-022:…一回目の誕生日の日に、▅▅の色が変わった。父様と同じ色になった。耳と尻尾も消えた。[編集済み]は、▅▅の中にチカラ?があって、それで耳と尻尾があるって言ってた。だから、誕生日になって、チカラが弱くなったんだと思う。でも、詳しいことは私はわからない。
▅▅▅博士:答えてくれてありがとう、▅▅▅。それから、あなたはどうしたの?
FCP-022:……廊下が、騒がしい。母様の寝室の方だ。…声、あの男の怒号が。父様の叫び声と、母様の悲鳴が聞こえる。私は▅▅を起こして押し入れに隠れた。
▅▅▅博士:…その状況を、あなたはどう思う?
FCP-022:怖い。あの男に見つかっちゃいけないと思った。▅▅は絶対に守らきゃいけないと思った。
▅▅▅博士:そうなのね、それはとても怖いね。…それから、あなたはどうしたの?
FCP-022:隠れ続けてる。…あの男が▅▅の名前を呼んでる。こっちに近付いてる。…押し入れの前で、足音が止まった。開けられると思った。…でも、たくさんの足音がきて…男の叫び声が遠ざかってった。[編集済み]の声が聞こえたから、押し入れから出た。…奥で、あの男がたくさんの大人に捕まってる。……赤い。
▅▅▅博士:何が赤いの?
FCP-022:男と、寝室と、廊下。…大人はたくさんいるのに、父様と母様が見つからない。大人達がとても騒いでる。
▅▅▅博士:…それについて、あなたはどう思う?
FCP-022:父様と母様が心配だ。探しに行きたいのに、大人が止めてくる。でも…目を盗んで、探しに行って…っ、…う…っ…!
〈FCP-022の呼吸が荒くなる。〉
▅▅▅博士:▅▅▅、大丈夫よ。落ち着いて。
FCP-022:…アイツだ…!アイツが、父様と母様を殺した!▅▅を奪うために…!
▅▅▅博士:落ち着いて、▅▅▅。ほら大丈夫、私がいるから。ゆっくり、深呼吸して…。
FCP-022:あぁ、だめだ▅▅見るな!…▅▅?姿が…あの時のに変わって…?……あぁ!だめだ!▅▅!そんなことするな!そいつと同じことをするな!だめだ、だめだ!やめろ!!
▅▅▅博士:治療班!至急 鎮静剤を!
FCP-022:▅▅!お願いだやめてくれ!そいつの血肉に汚れるな!お願いだ!いやだ、いやだいやだいやだいやだ!!!!
〈FCP-022に鎮静剤が注射される〉
FCP-022:▅▅!▅▅!やめろ!やめてくれっ、やめろ…!▅▅っ…。…アイツ…、アイツさえ、いなければ、▅▅は……。……アイツさえ………。
〈記録終了〉
後書:FCP-022は約一時間後に覚醒しましたが、酷く惑乱し「アイツさえいなければ」という言葉を繰り返していました。▅▅▅博士の判断により記憶処置が行われ、本セラピーの記憶は消去されました。次のセラピーの実行予定はありません。
FCP-022ヒアリングログ
実行日:▅▅/▅▅/9:30~
質問者:▅▅博士
〈記録開始〉
▅▅博士:おはようございます、FCP-022。
FCP-022:…お前が、▅▅▅(FCP-024の個人名)が言ってた博士とやらか。私自身の事について質問をすると聞いたが。
▅▅博士:えぇ。可能な限り答えてくださると助かります。
FCP-022:理由は?
▅▅博士:貴方を安全に守るのが我々の仕事です。そのためにも我々は、守る対象である貴方のことをよく知らなければなりません。
FCP-022:それは詭弁か?
▅▅博士:いいえ。
FCP-022:………わかった。質問を始めるといい。
▅▅博士:ありがとうございます、FCP-022。貴方は▅▅▅と同じ村の出身と聞きました。その村では麒麟に階級分けがなされていると聞きましたが、貴方はどこに属していましたか?
FCP-022:…無角種上級麒麟。階級だけ見れば▅▅▅とは無縁の存在だ。
▅▅博士:彼女と知り合った経緯を教えてもらえますか?
FCP-022:…▅▅▅がモンスターに襲われかけていたところに▅▅(FCP-023の個人名)が加勢したらしい。私はその場に居合わせてなかったから、母から話を聞いた形になるが。それ以来、階級を超えた付き合いになった。…もっとも、それから二年も経たずに私は村を去ったが。
▅▅博士:貴方は何故その村を出たのですか?▅▅▅から聞いた話では、狩人でない麒麟が村から出ると二度と村に戻れないと聞きましたが。
〈10秒間、沈黙〉
FCP-022:…言いたくない。私は自ら望んで穢れ者になった、それだけだ。それ以上は何も聞くな。
▅▅博士:…わかりました。FCP-022、貴方は太刀やロザリオを手放すことに抵抗を示しますが、何かしら理由があるのですか?
FCP-022:武器を手放すなど、自ら餌になりにいくようなものだ。お前達も懐に銃を隠しているだろう。確かに銃と比べたら私の太刀は大きいが、目的は何も変わらない。先に言っておくが、私はお前達を信用しているわけではない。此方に手を出してこないから、私も手を出していない…ただそれだけだ。
▅▅博士:…太刀の方についてはわかりました。では、ロザリオの方は?
FCP-022:…追放者の印だ。見せしめみたいなものだろう。
▅▅博士:そうですか。なら尚更、外した方が貴方にとっては都合がいいと思いますが?貴方に何があったのかは分かりかねますが、そこまで自身が追放者であることを示し続けなければならない理由があるのですか?
FCP-022:…それは、………。
〈45秒間、沈黙〉
▅▅博士:…FCP-022?
FCP-022:…博士。人間は祈りを捧げる時にこれを使うと聞いたが、これに間違いはないか?
▅▅博士:えぇ、そうですね。ロザリオはカトリック教徒が使う祈りの用具です。
FCP-022:…だが、私のこれは、追放者の印だ。…人間のと、正反対の…。
▅▅博士:それは文化の違いではないでしょうか。人間社会の中でも、ある国で食材とされている物がある国では忌み嫌われている、というような差異があります。
FCP-022:文化、たしかにそうかもしれない。だが、それでもやっぱりおかしいんだ。
▅▅博士:どういうことですか?
FCP-022:追放者にこんなものをつけるなんて、私は聞いたことがない。実際に追放者を見た記憶はないから断言はできないが…だが、▅▅や▅▅▅はこれを持っていない。そもそもこの道具を村で見かけたことも、存在を教わったこともない。まるで…、まるで、後から付け足されたような…、真実を書き換えられたような…そんな感じがするんだ。
▅▅博士:誰かに記憶をすり替えられていて、それが私達によるものではかと思っているのですか?
FCP-022:…お前達が記憶を消せることは知っているが、お前達の誰かからこのロザリオについて何か言われた記憶はない。…いや、村の麒麟からも、両親からも、[編集済み]からも…誰からもロザリオに関して言われた記憶がないんだ。それなのに私は…、このロザリオは追放者の印だと理解している。まるで、そう思い込むように、誰かに暗示をかけられたみたいに…。
▅▅博士:そのロザリオに何らかの意識改変能力があるかもしれません。FCP-022、検査のためにそのロザリオを…。
FCP-022:ふざけるな、これが欲しいなら私を殺してから奪え。……っ、…はぁ……狂った発言をしているのは、私もよく理解している。だが…どうしても、私のそばからこれが離れるのは…想像さえも耐えがたいんだ。
▅▅博士:…貴方が着用した状態のまま検査を行う場合は?
FCP-022:…そんなことできるのか?
▅▅博士:上層部に持ち掛けないことにはわかりませんが、解明のためなので却下される可能性は低いかと。
FCP-022:………壊すなよ。
〈記録終了〉
後書:ヒアリングから5日後、ロザリオの検査が行われました。分子運動検出器やエナジーグラフィーカメラなどが用いられましたが、いずれも特異な反応は確認されませんでした。このため、FCP-022のロザリオに対する意識についての原因は別にあると考えられます。FCP-022が追放者となるに至った事案に原因があると考えられていますが、FCP-022はこれに関する供述を拒否しています。
